松井良太

王道を進むか、我が道を切り拓くか

【株式会社エクスモーション・コンサルタント】技術力を売りにする会社で「技術力のないコンサルタント」として、個性を尖らし我が道を切り拓く。今でこそ自信を持って突き進むが、「個性を諦め王道に進むべきか?」と悩む時期もあった。それでも迷い続けたからこそ、気付けたチャンスがあったと言う。今、自分なりの「頭の良さ」を活かして成長できることに楽しさを感じている。 (2020.7)

「頭の良さ」を尖がらせたい

中高生時代から、アイデアを出すのが好きでした。誰かがすでに思いついているアイデアでも、それを知らずに自力で思いつけば勝ち。今でも、何かしらの真理に自分でたどり着くことに快感を得ています。

これをはっきり自覚したのが、大学4年生の時。微生物の研究のゼミで様々な発表を聞き、先輩と実験方法について「もっとああした方がいい」「こういうことをやってみたら」と議論をしながら、自分がそれを楽しんでいることに気が付きました。ブレークスルーを考えることを通して、自分は頭を使うことが得意だと思ったんです!ひたすら研究を極める道も想像していましたが、やはり楽しいのは手を動かすことよりも頭を動かすこと。それを活かしていきたいと思いました。

個性がより活きる環境へ

新卒で入った会社では、仕事を一種のゲームと考えていました。順調にゲームをこなしていたのですが、5割程の力でクリアし続けられたので、つまらなくなりました。このままではダメになるという危機感から、転職を決意。全力を尽くしたかったし、それができていた大学での楽しさも影響していました。

転職してからは、ちょっと背伸びをしないとできない仕事を振られるようになり、おかげで仕事で活せる自分の「頭の良さ」を見出すことができました。当時考えていた頭の良さは「誰でもできることを誰よりも上手くやること」。文章力やモデリング力を武器に、社内最年少でエンジニアからコンサルタントに昇格しました。

王道に沿わない個性への悩み

「誰でもできることを誰よりも上手く」。これは実は、得意な技術を持たずに基礎を強みとして仕事をするスタイルです。大学の時に頭を使うことの面白さに気付いてから、特定の技術の習得に注力することをやめました。技術は、理想の結果に近づける手段。そこを極めるのは得意でないと感じたし、技術そのものは得意な人に任せようという発想で、技術の道は捨てたんです。自分は、技術をどう使えば価値を生み出せるかを考えることに注力しようと思いました。

しかし、技術を用いず勝負することは、会社の王道とは外れる道でした。コンサルタントには昇格したものの、そこからは、自分の路線に限界を感じて焦っていました。先輩は皆「自分の技術」に夢中で、土日も厭わず勉強している、それに引き換え自分は、多少興味を惹かれる技術はあっても、ゲームの方が楽しいし、カープの試合も気になるし…。やはり個性に固執せず、技術に熱い「変態な」先輩を見習って王道に進まなければ先はないのか…。そんな時に、「IoTイノベーションチャレンジ(イノチャレ)」参加のチャンスがやってきたのです。

個性を伸ばし道を切り拓く

イノチャレ参加のチャンスを得られたのは、偶然でした。得意な領域かも分からなかったけれど、藁にも縋る思いでちょっとの勇気を振り絞って参加を申し出てみたら面白くて、「頭の良さ」はグレードアップしました。「ストーリーを組み立てる力」の奥行きが何倍にも広がり、その後の自分の可能性を広げてくれています。今から2年前のことです。

そして今年、コロナウイルスの影響で働き方が変化しているタイミングも上手く重なり、イノチャレの経験をステップにDeruQuiに携わるようになりました。今は、アイデアをストーリーにして実現できる形にする、「畳み人※」としてのロ―ルを確立しているところです。個性を活かせる道を見つけられたことで、今までにないほどの急激な成長期を迎えていることに驚いています。結局、「個性を活かす道がなかった」のではなく、「個性がまだ弱かった」だけであり、「自分で道を見つけて個性をさらに伸ばせばよかっただけ」だと気付かされました。

※設楽悠介著『「畳み人」という選択 「本当にやりたいこと」ができるようになる働き方の教科書』より

「頭の良さをフルに使って、人を手助けしたい」

ゼミでも、個性を出すことを率先してやろうと思っています。それは、人に影響を与えたいから。小さくまとまるのではなく、誇張とも言えるレベルで自分の価値観をバリバリに出すことで、周波数の合う誰かにとっての「人生を変えた人」になりたいと思っています。

学生時代に塾講師をやっている時から、伝え方はすごく意識していました。人を支えるポジションは合っていると思うし、できれば会社の枠を超えて貫きたいと思っています。そしてやるなら徹底的に。幸い、自分の頭の良さを活かして教えられることは色々ある、という「素敵な勘違い」をしています。

ゼミ生へ

個性を活かすチャンスが成長の転機

私の生き方は、会社の中では成功の王道ではないです。でも王道にこだわらず、個性を活かせる自分の道を模索することも大事だと思います。遠回りに見えても、きっと最終的にはそれが、大きく成長できる道なのだと感じます。

皆さんには、「飛び込むことで人生が変わるチャンスがある」という実感を伝えたいです。そしてそのチャンスは、適切なタイミングでやってくる。だから、遅すぎるなんてことは決してないです。そういう意味では例えば、DeruQuiに参加したからといっていきなりイノベーターを目指さなくても大丈夫です。タイミングが合わなければ「挑戦しない」ことも価値ある選択だと思っています。もしかしたら37歳くらいにいきなりふと思い出して目覚めるかもしれません。私みたいに。

では、そのチャンスをものにするためにはどうしたらよいのか。模索している時に、考えるのをやめないことは大事なことだと思います。考えながら無意識に感じていたことを、何かのはずみで思い出すかもしれません。考えて、土を耕し続けていると、良い種に巡り合ったときに一気にそれを育てることができるでしょう。

編集後記

「自分は喋りたがりだ」と言って、お話することを楽しんでくださったので、とても聴きやすかったです。(インタビュアーへの気遣いかもしれませんが⁉)さらに、名言もちらほら。しかし、「おれ頭いいからさ」と平気で自信を口にするユーモアと潔さを表現するのはとても難しく、松井さんならではの魅力なのだと確認させられました。そんな松井さんが焦りを感じていた時期があるのはとても意外で、私の中で、松井さんがよく言う「人生の選択はすべて正解であった」という言葉の重みが増しました。 (岩崎咲耶)