高岡 慧

「なんとかしたい。」想いを叶える

【富山高等専門学校 専攻科2年】突出した能力を持つ他者への憧れと自身の将来への不安から、様々な挑戦を繰り返してきた高岡さん。「社会で活躍するために…?」を深く考えつつ意思決定してきた。今は、地方への強い想いから、学業と並行してフルリモートで東京の企業(Another works)にインターン中。不安や焦りを感じても、それをバネに今できることを徹底的に行い機会を最大限に活かしてきた。(2021.05)

街づくりへの想い

「国際的に活躍するビジネスパーソンになる」そんなスローガンに惹かれ、高専に通っています。高校は大学受験のためというイメージが強く、自分自身の将来に不安を感じていた私は、社会で活躍するためには普通の高校に進学してもダメだと考えていました。高専に行って、得意の英語を「極めよう」と思ったんです。


2年前、友達に誘われて学生主催の射水市ツアーに参加しました。陶芸体験ができ、お昼ご飯も無料ー、それなのに参加者はたったの5名。「どうしてこんなに少ないのか?もっと参加者を増やしたい」と思い、企画メンバーに。それをきっかけに様々な街づくりイベントに参加するようになりました。予算を決めてもらうため、市長にプレゼンする機会も得られました。活動する中で目の当たりにしたのが、市役所の方が朝早くから深夜まで働く姿。こんなに業務に追われていては、町おこしどころではないと危機感を抱きました。そこから街づくりに携わるようになり、「地方創生」に想いを持ち続けています。

もともと「社会で活躍したい」と考えていましたが、この出来事をきっかけに、「活躍とは何か」が自分の中で変わりました。それまでは自分のことしか考えておらず、「何か突出した能力を身につけて活躍したい」と思っていました。しかし、忙しく働く市役所の方や、祖母と通っていた商店街がシャッター街に変わる様を見て、今では社会のために、地方のために、「社会で活躍したい」と考えています。

地方への想いで働く

現在私は東京にあるAnother worksという会社でインターンをしています。私は富山に住んでいるので、フルリモートの形です。ここで働いているのは、地方への想いが会社代表に届いたから。就職支援サービスの運営者に想いを長文にしたためて送ったところ、Facebookに載せてくれてー。それが代表の目に留まり、繋がることができました。

Another worksがやっていることは、複業人材のプラットフォーム運営。複業人材を行政に還元することで、地方自治体の取り組み支援も行っています。私が目にした市役所の忙しさ解消にも繋がり、「こういう社会にしたい!」と思えるものですね。だから、どんな仕事でもいいからこの会社で働いて、目指したい社会に近づけたいと思いました。


インターンでは、メディアと広報をやっています。未経験の分野でしたが、「この子ならやってくれる」と思ってもらえていることが嬉しいですね。一方でSNS、主にTwitterの運用については私は知見がなく、聞ける人もいない状況で、会社に貢献できないもどかしさも感じていました。

このままではダメだ、という想いから、分析して自分なりの方法を見つけていきました。例えばSNS公式アカウントを伸ばしたいなら、実際に伸びている人に聞いてしまえばいい。そう考え、Twitterでメッセージを送って聞きながらフォロワー数を伸ばしていきました。今では私が他の団体から聞かれる立場になっていますが、まだまだ貢献は全然。だから今後も、身の回りに参考になる、あるいは自分と同じような人がいないことでも、「見つける」・「話しかける」・「自分なりに取り入れる」でやっていこうと思っています。


最近、石川県のインターン生が入りました。その時代表が言ってくれたのが、「フルリモートは不安だったけど、けーやま*がしっかり成果も出してくれて信用できるようになった。だから次の人もフルリモートで雇えた」という言葉。とても嬉しかったです。私がフルリモートで他の方の様子も分からず、主に日報のやり取りだけでも続けられているのは、目的があったからです。会社のビジョンに共感し、そこに貢献することを通じて地方を良くしたい。そんな目的があったから、不安や辛さがあっても頑張れています。

*けーやま:高岡さんの愛称

DeruQuiとの出会い

DeruQuiには、メンターの平木さんから紹介を受けて参加しました。富山のことを考えていた時に、経営塾で出会ってインパクトのあった平木さんのことを思い出し、Twitterで探し出しました。そして自分のビジョン、富山の抱える課題、それをどう改善すべきかー。そんな図々しいことをいきなりメッセージしたんですよ(笑)。するとDeruQuiのことを紹介してくれました。平木さんに紹介されて初めて、自分は「出る杭」だと思われていることに気づきました。

DeruQuiで他のゼミ生のビジョンを聞けることはとても楽しいです。また選抜コースを通じて、「私はこんなことを考えていたんだ!」と気づくこともできました。今は東京に一極集中していて、それが日本の競争力低下に繋がっているのではと考えています。だからこそ、地方が盛り上がれば日本も元気になるのではないかー。最初は富山への想いだけでしたが、このように地方、そして日本と視野が広がっています。

地方から日本を元気に

今のインターン先に就職するため富山を離れますが、いずれは富山に戻りたいと思っています。富山愛の強い金津君と、30歳になったら何かしようという計画もあります。富山に限らず他の地方にも住んでみたいです。

社会で活躍するのは「想いが強い人」。インターン先の代表がまさに当てはまります。お金よりも、人材業界の課題やその先のビジョンといった想いを大事にする。想いが人を動かすというのは、その通りだなと思います。私も富山に貢献するという強い想いを伝えたから、インターンに合格することができました。おそらく普通の就活生であれば、合格できなかったと思います。


地方にはそんな、「何とかしたい」という想いを持った人がたくさんいます。先のシャッター街のように、地方は課題を目の当たりにして、自分事に感じることができるので。私の想いの原体験は、やはり市役所。会うたびに痩せこけていく職員の姿には、地方に対する危機感を強烈に感じます。限界集落を見ていると、何年後になるか分からないですが自分の街にもその波がくるのではないかとー。生まれた場所は私にとって大事なところ。それがなくなってしまうのは、本当に悲しいことです。この想いは、誰もに共通することですよね。だからなんとかしたいんです。

地方の人の強い想いは、自分の生活以外にも視野が広がっています。そんな想いが盛り上がることは、結局日本のためにもなると考えました。それには、飯さんが掲げているVision、「多様な人がいて当たり前で、色んな価値観を認め合える社会」を実現することが必要になると思います。海外の自由な国の事例をうまく取り入れて、例えばジョブ型雇用になり、自分のスキルで生きるといった社会になってほしいですね。

「複業」は「想いはあるけど出来ない」を解決するために、一つの鍵になると思います。例えば市役所の人は書類に目を通す時間が、忙しさの原因の一つになっています。それはきっと、デジタル化あるいはDXによって解決できるはず。都会には優秀な人が多いと思うので、そういった人を「複業」という形で紹介する―。様々な人の想いを実現するために、それが私にできることの一つかもしれないと思っています。

編集後記

「なんとかしたい」の原動力の強さがとても印象的でした。たくさんの苦労をし、不安や焦りを感じながらも、できることを精一杯、逃げずに成果を上げられる強さに感嘆します。想いをしたためて周りの大人に訴える行動力にも目を見張りました。高岡さんにとって活躍する大人は「想いが強い人。その想いが自分だけではなく周り、社会に向いている人。」インターン先の代表をイメージした答えだそうですが、そのままご自身にピッタリ当てはまる凄さを感じています。(岩崎咲耶)