野村 夏希

地学を愛し世界を変える

高知大学理工学部 地球環境防災学科2年】「精神年齢小学生」をモットーに、探求心とひらめきの力を信じて前進を続ける野村さん。愛する地質で世界を変えることを目指し、まずは学生団体のリーダーとして高知を変えるところから、既に挑戦が始まっている。そんな野村さんは、日々何を考え、どのような思いで行動してるのか、熱い思いを語ってもらった。 (2020.10)

無難な道より地質愛

私の強みは地質への愛です。高校生の時から「地学好き」として学校の中でも有名でした。先生が授業の雑談で話す地震の話が面白くて、独学でも調べるようになったのがきっかけです。調べていくうちに「地震の予測ができたら世界を支配できるのでは」と思うようになり、ますますのめりこんでいきました。地元福岡の断層を調べたり、地震発生時に「どこの断層がどのように動いたのか」の分析と答え合わせをしたりしながら、学校の先生とも語っていました。(そのせいで他の勉強はおろそかになってしまったのですが...。)

将来を考えたときも、地学に携わる進路を選びました。周りの人からは、「地学関係の仕事は少ないぞ」と止められましたが、私は地質に一生を捧げたいと思いました。実は土木の関係の仕事にも地学が必要なので地質コンサルとしても働ける、学校の先生にもなれる、確かに地学関係者の人口は少ないけれど、諦める理由もありません。

大学入試時は、興味のある研究室や先生のことを調べ、先生の論文を読んだりしていました。今学んでいる高知大学の受験でも、「この先生の研究に興味があって、それは自分の将来につなげられるから、そこで研究させていただきたい!」とお話したら、受かりました。地質への愛と、その研究室に入りたい一心で受かったのだと感じています。

高知大学合格発表

気になることはとことん追う

高知大学に入って地震の予測をしたいことを話すと、先生には「予測は無理だよ」と言われてしまいました。始めは「いや出来る!私がやってやる」と思っていましたが、確かに情報が少なすぎて難しいことが分かりました。今は、「美しい地層をもっと見てみたい」という思いが学びの源泉です。フィールドワークで生の地層を初めて見て、もっと見てみたい!と思うようになりました。特に高知県の須崎にある、地層マニアでも行かない「一歩間違えたら死」という険しい道を進んだ先にある地層である五色の浜を訪れた時は、まさに「地球の賜物」と感動しました。「地球が歩んできた歴史」をもっと知りたいと先生に相談し、今度は五島列島に行ってきました。先生の知り合いのガイドさんも一緒ということで、逃すことはできない貴重な機会でした。

ご一緒したガイドさんとは、地質学の先輩として、地質のことからプライベートのことまで2泊3日語りあかしました。「ジオパーク(※)でこんなこと見せたいんだよね」という話には、地質の土の粘度を再現するために私が考えた実験を取り入れたら面白いのでは、と提案もしてみました。

今も地層をもっと知りたい!知りたい!!知りたい!!!と、「好き」という気持ちで動き続けています。レポートも、いかに誰よりも上手く書くかを意識して、美しい地層の写真にもこだわりながら夢中で作成しています。

※ジオパーク:地球(ジオ)を学び、丸ごと楽しむことができる場所として認定された「大地の公園」。5年前にやっと「ユネスコ」に認められた。

はじめてのフィールドワークの場所(室戸岬)全てはここからはじまった!?

「一歩間違えたら死」を経て感動を経験した五色の浜

DeruQuiは変化のきっかけ

私はまだ知識が不足していますが、行動力を伸ばして補おうと思っています。最近になって、そんな行動力を大きく発揮するようになりました。きっかけになったのは、コロナウイルスの影響で、ずっと家の中で過ごしていることに危機感を覚えている頃に、サークルの顧問の先生にDeruQuiを勧められたことです。「とんがった人が集まる場」と聞いたときは、私なんかは淘汰されてしまうに違いないと怖い気持ちもありました。それでも「やってみないことには」と参加すると、色々な方と出会えて勉強にもなる―、まさに「自分をアップデートできる場」で、「これは楽しいぞ」と思いました。

これを機に、もっと色々な出会いを求めて地質のインターンなど外の活動を探して参加するようになったんです。五島列島に行きたいとコンタクトしたのもこの時期です。DeruQuiのゼミで、メンターの斉藤さんが実施している「アカデミーキャンプ」の話を聞いて、「自分も体験してみたい!」と思った時も、翌日にコンタクトしてその週のうちに参加させてもらいました。

さらに、今まで「変だ」と思っていた自分の性格が、DeruQuiでは「長所」として褒められる対象になったことで、新しい視点に気付きました。この「変な自分」は全然おかしくないんだ!と自分を爆発させることが出来ています。今後も色々なゼミ生・メンターと出会うことで、新しい関係を創って、新たに得た視野を取り入れることで自分のアップデートを続けていきたいです。つい先日も、社会問題を考えるゼミ生の話を聞いて、「地質好きな自分」をどのように「社会」に活かせるかを意識するようになりました。社会を意識した「風呂敷を広げる」という考え方を新たに獲得し、今も考え続けています。

大瀬﨑の崖にて。怖くて足が生まれたての小鹿になっており立てていない ...。

福江島(五島列島)ガイドの安永さんと一緒に

モットーは「精神年齢小学生」

私は「精神年齢小学生」であることを大事にしたいと思っています。「探求心」によって自分をアップデートし続けたい気持ちと、実験を通して手を動かしたい思いから、世間ずれする前の小学生の気持ちを意識出来れば、と考えています。「アカデミーキャンプ」でも、実際の小学生の話を聞きながら、自分も小学生に近づこうとしています。

「下調べはするけど飛び込むタイプ」という私の性格は典型的な地学家タイプらしく、「探求心」は地学家としても必須な要素だと言われたことがあります。だから私は、一生地学家でいたいと思います。それも、「探求心のある小学生」として。もちろん、新しいところに飛び込んでいくことは緊張します。しかし、進まないと変わらないので、まずは相手に「変な人だな」「話してみようかな」と思わせて、入り込んでいます。

その上で、社会で活躍するためには「ひらめき」が必要だと思っています。面白いものを見つけると自然と生まれる「ひらめき」は行動の推進力になります。ひらめきがないのは、いわば「座った状態」で社会を見ているだけであり、ひらめきによって「立って」歩き出すことができる、そう考えています。

福江島の嵯峨の島の褶曲(ガイドさんと話して「なんだろーねー」予想したけれど形成方法がよく分かりませんでした…。しかし本当に綺麗!!

世界を変えるため、まず高知県を

将来は、地学で世界を変えたいと思っています。私のような若輩者が世界を変え、「大人たち何してるの?」と言えるようになりたいです。

例えば、新しい地層を発見して、地質学会の考え方に変革を起こしたり、もしくは今の防災のあり方を変えたり。避難所がきちんと登録されていなくて、その土地の人でないと把握出来ないのはまずいと思いませんか?山奥を訪れることが好きな私は、そういった現状を変えていかなければ、と強く感じています。そのために、一律に避難所を提示するのではない「オーダーメイド防災」を広められたら、と考えています。

今、「高知県を変える」というレベルの新たな挑戦を、学生団体のリーダーとして取り組んでいます。高知県の日高村の魅力を発信する団体で、コロナ禍でもやっていける新たな企画として、フォトロゲイニング(※)の実施を考えたんです。「お金がかかる」ということで顧問の先生に反対されているのですが、クラウドファンディングでお金を集めた経験を持つDeruQuiゼミ生の秋元さんの話を聞いたり、フォトロゲイニングの実施経験のある他の自治体の話を聞きに行ったりしながら企画は進めており、必ず成し遂げてみせます。まずは実績を創ることで、「お金集め」が課題である高知に新しい風を吹かせたいと思います。世界を変える第一歩として、学生だから失敗も出来る、という気持ちで全力で取り組んでいます。

※フォトロゲイニング:地図上にあらかじめ設定されたチェックポイントを制限時間内で多く巡り獲得した合計得点を競うスポーツ

学生団体イベント

文化祭にて

編集後記

地質への愛に加えて、「自分をアップデートする」「社会を変える」と、より良いものを生み出すための強い信念も持っており、終始、パワフルな頼もしさを感じるインタビューでした。簡単には折れない反骨精神を持ちながら、新しい視点をぐんぐん吸収していく変化の様子は、独特で美しい地層のように(?!)周囲の人を惹きつけているように思います。(岩崎咲耶)