山田 大成

「好き」をつなげてエネルギーを生む

【富山県立大学大学院 2年】全ての人が何かしら一芸に秀でていることを知っており、それぞれの点を線に繋げることが一番面白いと話す山田さん。小学校のころから学外での活動に数多く飛び込み、その中で人が輝く瞬間を見てきたことが背景にあるという。山田さんは点を線につないだ先に、何を見ているのだろうか。(2021.05)

誰もが一芸に秀でている

僕は生まれてからずっと富山にいますが、よく「なぜ富山を出ないの?」と言われます。県外に出る人への反骨精神みたいなものもありますが、一番は、富山にいるからこそ、の面白い人と出会いがたくさんあることです。

誰でも秀でたものを持っていると僕は考えています。小学生のころから多くのコミュニティに飛び込み、様々な人を見てきました。「勉強が一番大事、勉強できる人は良くて、できない人は悪い」そんな風潮が社会にはあると思います。けれど勉強が出来なくても、スポーツができる人、読書が好きな人ー。様々なコミュニティに飛び込む度にそういった人たちが色濃く見えました。それが印象に残っていて、今の考え方の根底にあるのかもしれません。

機械系、プログラム技術全般に興味があり、工業高校に進学しました。進学する際、「なんでそんな勉強できない学校に?」と言われましたが、「言わせておけ」と思っていました。勉強が好きでなくても自分を押し殺して行く人がいる普通の高校よりも、工業高校の方が絶対に面白い人がいる、損をすることはないと自信を持っていたからです。


大学への進学も、「面白い先生に会えそう」が動機の1つ。読み通り、大学に行くと面白い癖の強い先生がたくさんいました。大学は専門的なので、先生の色が濃く出ますね。そんな先生たちが好きなことを話す目は輝いて見えます。先生によって授業の進め方や脱線の仕方が違うのも面白いです。知識の習得以上に、人の広がりが感じられることを楽しんでいます。

共通項があれば物怖じしない

小学生のころから、色々な人と付き合うようにしていました。サマーキャンプに行ったり、部活動を何種類も試したりしながら。何かをやりたい、というよりも色々な人と仲良くしたいという思いで、誘われたらどんどん飛びついていました。そこでネットワークが広がり、また誘われてという形で、人のつながりを広げてきました。

課外活動には色んな得意不得意を持った人が集まります。同じ活動に参加している以上、それを面白いと思ったり同じ目標を持っているはず。そんな共通項があると考えれば、物怖じせず話しかけられます。大学でサークルを立ち上げた時も、同じ思惑で講義を選んだという共通項があるので、あまり話したことのない人にも積極的に声をかけました。その結果、同学年同学科の1/3をメンバーとして集めることができました。


人と人、コミュニティとコミュニティ、そんな点同士をつないで協調できる人が、活躍する社会人だと感じます。別物と思っていた団体が、実はつながりがあって協調していることに、子供ながらに気づいた瞬間は印象に残っています。きっかけは、「全然違うもの同士なはずなのに」という違和感で、そこから俯瞰して見ることで気づくことができました。その団体の先頭の人が、両団体の良いところのリソースを使い合っている凄い人、と気づいたときに、「協調できる人が活躍している」と感じました。それぞれのコミュニティの中の想いを大切にしつつ、俯瞰で見て使えるものは活かす、それによって良い循環ができているのが協調の理想かなと思います。

つなぐだけでなく発信を

工芸の分野にも縁があり、今は「日本の伝統を世界に伝える」DEN-DENという団体の副代表をしています。代表の山﨑が隣でDeruQuiのゼミに参加しているのを、「めちゃくちゃ面白そう!」と思いながら見ていました。やりたいこと、熱い想いを持った人が集まったネットワークが良いな!と思います。

僕はこれまで、様々なコミュニティに飛び込んでそれぞれの話を聞きながら、つながりを生み出すことに幸せを感じてきました。そこで自分の活動も知ってもらえています。しかし、ゼロから自分で拡げる、発信するといった部分が、自分に足りていないという課題感があります。つなげるだけではフラフラした人。自分自身も強固なものを作って、手と手を取り合って協調させることができたらー。その力を身につけたいと思って、DeruQuiに参加しています。

エネルギーを生むつながり

今の社会は、同業他社同士ですら孤立していて、もったいないなと感じています。大きな意味では同じことをやろうとしているはずなのに。それぞれの強みを時々に応じて上手くリンクさせて協力し合えれば、世の中に対して良いものが提供できるのではと思います。きれいに関係図が描け、「これを解決したい」という大きな目標に向けて協調できる社会になればと思います。


その中で、私自身の根幹はやはり富山。ネットワークを広げながら、富山の中でまずは一緒にぐるっと囲えたらと思います。富山で頑張っている人は地元愛が強いんですよね。富山でしかできないことを活かしているので、業種が違っても源流にあるものや、向いている方向は同じ。だからどこかが線で繋がり、凄いエネルギーが生まれるんじゃないかなと思います。

DeruQuiも富山版がせっかくあるので、今後は富山色を活かした取り組みができたらと考えています。伝統工芸のプロを呼んでメンターとして参加してもらい、職人とデザイナーの卵を繋げてみたり。そういった取り組みを通じて、「富山もいいところ!」と思って県内で活躍してくれる人が増えれば嬉しいですね。将来的には私自身がメンターになれればとも思っているので、いろいろ勉強しているところです。

好きなことを好きなだけ

誰もが好きなことを存分に楽しめるのが僕の理想です。一見役に立たないことでも、モチベーション高く取り組めばいくらでも伸ばしていけます。自分の可能性を見つけられない人でも、いろんな視点・物差しで評価してくれる場所に出て行くと、「好き」はどんどん膨らましていけます。熱中して取り組む中で発想が広がっていくので、誰かの「好き」に繋がる可能性も無限にあります。

「そんなことをやっているくらいなら勉強しろ。」これは一番嫌な言葉ですね。本来、教育は個々の強みを磨くもの。「これができたら100点」ではなくて、「みんなで面白いものが出来たら100点」という想いで、各々の「好き」を膨らませていくことを大事にしたいです。学歴社会は、「勉強ができるかできないか」という小さな物差しで人を評価すること。そこに違和感を感じてきたからこそ、僕が思う「本来の教育」を発信していきたいと思っています。

発信したいことを人に紹介できるまで育てられたら、共感し合える他者に協力してもらうことも、自分が組み立てたものを持って行くことも出来ます。色んな人たちがいて、正解を求めるのではなくお互いが気づきを得る。そんな風に学び合える場所を作れたら、と思っています。

編集後記

今まで飛び込んできた世界の広さ、出会ってきた人の面白さから、人それぞれが持つ魅力や可能性を誰よりも知っているのだという自信が魅力的です。周囲の反対を気にせず面白さを追求できる想いの強さは頼もしく、自然と多くの人が集まってくるのだろうと感じました。DeruQuiも、山田さんのネットワークとの相乗効果で、たくさんの個性の爆発を促進させたいです。多様な物差しで人の魅力を発掘しようという使命感に共感し、積極的に応援したいです。(岩崎咲耶)