樋口れみ

平等な世の中に近づけたい

慶應義塾大学環境情報学部 2年 】学外の人との出会いが楽しくて、暇さえあればイベントやフォーラムに参加して友達をつくる。そんなイベントで気付いた社会課題とテクノロジーの面白さが、今のビジョンのきっかけという。常に最新情報をキャッチしている樋口さんは、その強みを活かして何を成し遂げるのか―。 (2020.10)

デジタルで平等な社会を

私は慶応大学SFC(湘南藤沢キャンパス)の環境情報学部で学んでいます。高校で3年間勉強したプログラミングを実際にどう社会で活かすかを考えるために、文理融合の大学・学部に進学しました。今は2050年を見据えたデジタル政策を考えるゼミに所属し、教育のデジタル化を研究しています。

もともと、住む場所によって受けられる教育に格差があることが気になっていて、地域格差の問題に興味がありました。コロナの影響もあって教育もデジタルに移行する必要があると思っていて、それを政策として日本全国にどのように統一するかを考えます。アナログからデジタルに移行することで物理的な距離の制約がなくなり、スピードも上がり、ツールが使えて便利になりました。それだけでなく、今まで何かしらの障害で特別な教育の形が必要だった人も、画面さえ見ることが出来れば授業に参加ができるようになることが、デジタルの力だと思っています。

学外イベント・HACK U プレゼンテーション at ヤフー(2019.11.25 )

ミッションの発見

教育の格差に興味を持ったのは、高校生の時に参加したイベント参加者の言葉がきっかけでした。東京で開催されたMONO-COTO INNOVATIONに広島からはるばるやって来た同じ学生の参加者が「交通費の補助のおかげで参加が出来た」と言っているのを聞いたんです。「環境」という自分では選べない条件が、イベントにアクセスできる人とできない人との壁になっていることが気になりました。モチベーションが一緒なのに違う結果になるのは不平等ではないか、と。大学に入って日本全国からやってくる学生と接する中でも、実際の中身ではない部分で評価されることの問題を実感することがありました。

高校卒業前に1人で行ったドバイ留学は、「自分の価値観」などなくなってしまうような体験でした。ちなみにドバイを選んだのは、英語とアラビア語が同時に習得できるから。アラビア語は言語圏が広く、国連の公用語でした。「世界一」が多いことにも惹かれました。そのドバイでは、面積は小さいのに、建物や施設の規模がいちいち大きかったことが衝撃的でした。語学学校では、アラブ人を思い浮かべたときの絵のままの、ベールを巻いた先生とのハグからレッスンが始まります。多国籍で構成されていたクラスメイトに、リゾート地でパイナップルジュースを飲んでいそうな恰好でやってきた人がいたのにも驚きつつ、「英語でアラビア語を学ぶ」のは一石二鳥以上の体験でした。「○○人だから...」とか言っている場合ではないですよね。この「○○だから」という考え方は、私が陥りたくない考え方です。私が社会人になるときもステレオタイプに則った考え方に甘えることなく活躍したいですし、「その人として」を重視した平等な観点を持ちたいと思っています。

留学 ドバイ UAE (2019.01.14 )

毎日のイベントで視野を拡大

教育格差への気付きも、プログラミングを学ぶようになったのも、学外でのイベントがきっかけです。私は中学生の頃から、積極的に学外のイベントに参加するようになっていましたが、最初はほんの軽い気持ちからでした。

中学1年生の時、たまたま学校の廊下に掲示されていた、赤十字が企画していた約1週間の宿泊イベントの案内を発見し、「お泊りが楽しそう」くらいの気持ちで友達と参加したんです。そのイベントで、「学外の友人をつくれること」「学校では学べないリーダーシップのおもしろさ」に気付きます。それからは夜な夜な楽しそうなイベントをネットでリサーチしては、積極的に申し込むようになりました。

中学生の頃に、初めての新幹線に一人で乗って、子供国連が開催していた名古屋でのイベントに参加したことは印象的です。分野は問わず、予定が無ければ参加する、というスタンスで、20日間位連続で予定が入っていることはままあります。行った先で友達を作って視野を広げて、を繰り返していました。

大学生になっても学外イベントには参加し続けました。中高時代は主に同年代の学生を対象にしたものに参加していましたが、大学に入ってからはインターンやフォーラム、ハッカソンやボランティアなど、大人と一緒に参加するようになりました。中高時代に参加したイベントの運営側となって、昔お世話になった人と再会することもあります。Facebookで大人の知り合いが増えていったので、下手なことはポストできません(笑)

最近参加してガツンときたのが、エジプトで行われたフォーラム(WYF)です。100か国から7,000人もの参加者が集まった場は、もはや「外国人」の概念がありませんでした。エジプトにいながら台湾やベトナムの友人ができたことも嬉しかったですし、生きた英語を使えたことも楽しかったです。エジプト人、インド人、ベトナム人、台湾人で行った、障がい者をテーマにしたディスカッションでは、国による価値観の違いに気付くと同時に、どんな先進国でも課題はなくならないことを実感しました。というのも、バリアフリー環境が整っておらず、車いすの人の移動には他者の助けが必須である国では、障がい者に関心を持たざるを得ないそうなんです。「日本はいいよね」と言われましたが、日本も障がい者雇用に関する問題などがあり、関心を持たなくて済んでしまう日本について考えさせられました。

学外イベントへの参加 (2018.03.24 )

WYF2019 シャルムエルシェイク エジプト (2019.12.14-17)

学びはアウトプットまで

プログラミングやテクノロジーへの関心を持ち始めたのは、中学2年生の秋に参加したiOSアプリをつくろうというLife Is Tech のイベントへの参加がきっかけです。小学生の頃から使っていたiPhoneですが、アプリを「つくる側」の存在を初めて意識し、さらに簡単なものであれば1日あれば自分でアプリを作れる楽しさを知り、イベント後も独学でプログラミング学習を続けました。

近未来系のものが好き、という趣味もあって、最新の技術情報は、すぐにキャッチアップするようにしています。自分1人のSlackをつくっていて、「エコ」「クリエイティブ」などテーマごとにチャンネルを作って記事を整理して保存しています。見るだけではつまらないので、例えばブログをかっこよくするためなど、実際に手も動かして使うことがとても楽しいです。翻訳を待っている間に情報が「最新」でなくなってしまうのが嫌なので、英語で情報収集することが多いです。

インターンも、社会のことをよく知りながら、新しいことを得られる場です。ウェブメディアのディレクションを行っており、大学の勉強がそのまま使えるので、学んだことのアウトプットの場としても活用しています。

ビル・ゲイツのように

将来は、ワーキングホリデーや、世界一周もやりたいです。お金を稼がないといけないので、会社員になるか、会社をつくって、デジタルやテクノロジーを主に扱うコンサルタントか、新規サービスのディレクションができたら楽しそうだな、と思っています。ただ、新卒一括採用は自分には合わないかもしれないので、空いているポジションに自分で申し込んで就職出来ればと思います。その前に海外の大学院に行っても面白いかもしれません。

差問題の解決は、営利ではなく政策で実現したいです。お金を稼ぎながら取り組むよりも、別のところで稼いだお金を社会課題に注ぐ方が上手くいきそうな気がしていて、世界の寄付金の何割かを占めているビル・ゲイツのような存在は、いいなと思っています。

交換留学 マニラ フィリピン (2017.07-08 )

DeruQuiは本質を考える場

DeruQuiの場を活用してミッション・ビジョン・バリューの整理をしながら、自分の本当にやりたいこと、軸を見直し続けたいと思います。今までは感覚的に「楽しそう」で選択してきましたが、自己理解を進めることで、根拠をハッキリ持って意思決定をして、機会を最大限活かすようにしないとダメかな、と思っています。ゼミで、自分の強みを考えた回が印象に残っているんです。それまでは、自分の技術力を強みだと考えていましたが、プログラミングが出来る人はたくさんいるし、あまりパッとしませんでした。しかし、技術力よりもっとコアな部分があることを初めて意識して考えて、個性・強みとはそういうことか!という気づきを得ました。平等な世の中をつくりたいので、本質を考えるための引き出しを増やすことで、実現に近づけていきたいと思います。

編集後記

「格差をなくして平等な社会に」という大きな社会課題を解決するという大きなビジョンを、明確で分かりやすく伝える様子は頼もしく、世界を舞台に活躍する様子が目に浮かびます。様々な国をめぐり、たくさんのイベントに参加された樋口さんの口から飛び出す気づきや発見は、聞いているだけでも面白く、豊かな経験をおすそ分けいただいたような楽しいインタビューでした。 (岩崎咲耶)