金津 充貴

富山への愛で富山を変える

【神戸大学経営学部4年】「難しくて楽しい人生」と自身の人生を表現する金津さん。地元・富山を愛し、地方創生のための市のイベントのコアメンバーとして活動。学内でもリーダーとして活躍しながら、周りを引き立て、陰で支えるのを厭わない。目立たなくても反発されるポジションになっても、むしろそこに存在価値を見出す。そんな金津さんが経験してきた様々な転機を伺いながら、今、何を目指しているのか、今後への想いを語ってもらった。(2021.04)

富山を変革する

「富山愛がすごい」―。そんな僕が目指すのは、「富山に住みたい」と思ってもらうこと。「観光になら行きたいけど、住みたいとは思えない」富山の現状を、変革したいと思っています。

富山愛に目覚めたきっかけは、おそらく小学生の頃の富山県外への旅行。県外に出たことで富山の水や空気のおいしさ、人の温かさに気づきました。その後、地元の観光資源を勉強するうちに、富山の良さにどんどん魅せられていきました。

そんな富山ですが、今は産業的に発展していないため雇用が十分でなく、大好きで住みたくても住むことができません。その現状を打破するため、「都会 or 地方」という概念をぶっ壊したいですね。「地方」や「田舎」にはネガティブなイメージがあると思います。その悪いイメージを払拭して、「自然に囲まれる生活もいい生活なんだよ」「人情味あふれるところに住むことは一つの生き方としてあるんだよ」と言えるようにしたいです。

富山への高い貢献意欲がモチベーションの源泉で、更に経営学を学んでいる自分だからこそできること。それによって富山に恩返しができれば、自分の存在意義も示され、人生も楽しくなると考えています。

「民」から「官」を動かす

富山を変えるため、市の企画イベントに参加しましたが、なかなか思うように進まないことを痛感しました。リスクやリターンを度外視して、学生ならではの力を活かし、やりたいことベースで考えを形にしようとしていたのですが。。。予算も割いてもらえず、決定権も一任する状態で、案出しだけでそのまま捨てられたような悔しさが残りました。

そこで気づいたことは、「民」が新しいことを生み出し、そのサポートや維持を「官」が行うという役割分担です。小さい企業でも、良いものを作れば多くの自治体や店舗が購入してくれることで変革のドライバーになり得る一方、「官」には変える力がありません。影響力を大きくするために、「官」へのアプローチも考える必要がありますが、僕は「民」から「官」を動かしたいと思っています。

今、富山県の企業が成長していない事実がある以上、どこかに課題があるはずです。しかし企業の内部はブラックボックス。だからまずは富山県企業の内部事情を聞きたいと考えています。手段は多様にあると思いますが、会計事務所の領域からアプローチしようと思っています。財務に課題があって、意思決定できるだけのお金がないところは多いのでは、と予測しています。

縁の下の力持ちになりたい

課外活動では、en-courage(学生キャリア支援団体)に所属してメンターとして活動しています。主体的な意思決定もとにキャリア設定し、納得した就活ができるように、との想いに共感したことがきっかけです。自分も利用者として、就活は自分の想いをかなえる手段にしか過ぎないことを教わり、それを伝えたいと思いました。自分も誰かのキーパーソンになりたいと思ったのです。

en-courageでもそうですが、チームでは前に立って引っ張るのではなく、後ろからみんなを引き立たせる「縁の下の力持ち」になりたいと思っています。普段はその重要性に気づかれないけれど、裏で自分が走り回ってうまく回る。終わってから存在価値に気づいてくれるくらいでよいと思っていますし、そういった存在に一番存在意義を感じています。

一歩引いて周りを引き立たせるため、人と話す時は否定から入らないようにしています。また多角的視点を意識する、特に皆が考えている消費者視点ではなく、企業視点で考えることを心掛けています。


実はもともと「目立ちたい欲」は強い方でした。それが変わったのが中学生の時。柔道部で先輩にいじめられていた時に、周りが励まし支えてくれたんです。そこから、他者貢献への想いが芽生えました。今度は自分が恩返しする番だと。小6から中学生の間で、価値提供への想いの矛先が大きく変わりました。他者に貢献して褒められることで承認欲求が満たされるようになったのです。とは言いつつ、褒められなくても自己満足できるので、承認欲求は満たされています。

DeruQuiは自信をつけられる場

DeruQuiでは自分を肯定してくれ、やっていることに自信を持てるようになります。自分に自信を持つことで、正解・不正解の枠を取り外して「とりあえずやってみよう」と考えられると思います。そして、自信を持っている人が活躍もできるのではないでしょうか。

そう考えるのは、昔は常に「正しいこと」を求め、自分のやっていることに自信が持てなかったからです。その考えが変わったのが就活。en-courageで就活の本質を考え、「知名度の高い企業にいけるか」ではなく、「いかに自分の納得したところにいけるか」だと気づいたのが大きかったです。自分の進路に自信を持てればそれが成功、と気づいたとき、正解・不正解を気にせずに「自分がやっていることは正しい」と思えるようになりました。

人間は不完全だからこそ協力する

リーダーとして物事を進めるときは、ビジョンを語り、モチベーションのサポートやマネジメントをして、陰ながら実行部隊を支えていたいです。そのためには、全て一定以上のレベルでできることが必要ですが、僕にはそれはできません。補ってくれる誰かが必要です。不完全なところをさらけ出して、誰かと協力することで完璧を目指したいですね。

ビジョンを共有した仲間が主体性を持ち、意見を論理的にも感情的にも対立させながら、ブラッシュアップしていけるのが理想かと思います。僕の意見を鵜呑みにするのではなくて、YesとNoの交じり合うところを目指したいです。そこを調整する中で、僕は組織の中では反発されるかもしれませんが、お互い褒め合いながら、内発的動機も高めていきたいと思っています。


選抜コースでは、いかに人を巻き込むかを考えたいと思っています。プレゼンは得意ですが、ただ発表するだけでは駄目だと思うんです。「言っていること、響いたよ!」「それはその通り、妥当だね!」「確かにそれはやらなきゃいけない!」と言われるだけでは駄目。一人ではやれないことを、一緒にやってもらえるように考えないといけないですよね。富山を変えられるように企業にアプローチする手段はたくさんあると思います。僕は経営の視点で考えていますが、それも手段の一つ。手段をどう変えて、一緒に動いてくれる人をどう巻き込んでいくか、と考えています。

編集後記

「人と話すのが好き」と仰る通り、終始笑顔で想いを伝えてくださった明るい雰囲気が印象的でした。「見えるようで見えないけど、存在価値のある存在」と堂々と話す金津さんからは、私たちが何事もなく楽しめるよう、いつもどこかで支えてくれるヒーローのような頼もしさを感じました。愛する富山の魅力を語る時の溢れる熱意と、周囲を引き立たせる他者への想いをエネルギーに、今後も変革のドライバーとして活躍されるのだろうととても楽しみです。(岩崎咲耶)