飯 みゆき

多様な価値観の中で、みんなただの『人』

【Linné共同代表】自分の知らない課題がたくさんあることを知り、「解決を人任せにしては一生終わらない!」と仲間を集めて学生団体を立ち上げた飯さん。異なる人種の人々との交流経験を活かし、「誰一人取り残さない社会」へ、予定をパンパンにしながら日々楽しく活動を繰り広げている。その熱意と行動力がどこから生まれたのかを伺った。(2021.04)

誰一人取り残さない世界へ

私は今、地域などでSDGsを広め、自ら実践する人である「SDGsコミュニケーター」として活動しています。通っている学校がユネスコスクールだったことからSDGsに興味を持ち、富山市のSDGsコミュニケーターを目指しました。認定されるのはとても大変でしたが、認定されたからには頑張りたいと思っています。

SDGsはよく耳にするけれど何か分かっていない人は多いと思います。そこでまず、SDGsとは何かを高校生に知ってもらう活動をしています。高校生は大人の意見を聞かないんですよね(笑)。だから高校生が同じ目線で伝えることが大事だと考えています。

SDGsの中では、「10. 人と国の不平等をなくそう」に特に関心を持っています。今も続けている大阪のNPOでの活動で、バングラデシュやラオスの方とZoomで話す機会がありました。向こうの方々は後ろに車が通るようなところでZoomに参加されており、「私は安全なところでZoomしているのに、なぜあの人たちは?」と感じました。そこから「どうしていくべきか?」を考えるようになりました。

今は、自分で学生団体Linnéを立ち上げ、「誰一人取り残さない社会」の実現を目指しています。「生きにくい」と思っている人が誰かしらでもいたらダメ。最近だとコロナで自殺する人も多いですが、この社会がその人たちにとって合っていなかった、つまりその人にとって生きにくいということですよね。色んな度合いの「生きにくい」に意識を向けながら、達成したいと思っています。

Linné でパワーアップ

Linnéの活動範囲は本当に幅広いんです。人権問題やジェンダー問題を考えたり、Instagramを使ってSDGsを広めたり。富山県の高校生を集めて、富山県をもっとより良くするためにはどうしたらいいんだろう、ということを考えたりもしています。

自分で団体を設立したのは、探しても探しても、自分に120%合った団体がなかったからです。やりたいことを全部実現でき、かつ富山にフォーカスしてできる。そんな団体がないのなら、作ってしまえばいい、と。海外出身の友人が、「失敗しても、無かったことにすればいいじゃん」と後押ししてくれたことも大きいです。海外の「経過はどうであれ結果を重視する」考え方は、日本の「プロセスを丁寧に考えすぎる思考」よりも断然楽に感じます。クラスメイトに多様な人種の方がいる環境のおかげで、異なる価値観から刺激を受けてパワーアップしていけています。

Linnéは、Instagramの呼びかけに応えてくれた16人ほどの中から、3人を選んで一緒に立ち上げました。全員、何かしら社会に不満があり、ここは変えなければいけないという想いがある人たち。「これは事実だからいいじゃん」とならず、「だけどここは違うよね」と思える人です。チームで4か国語に対応でき、4人それぞれ特技がバラバラなことも特徴で、とても大事なことだと思っています。

最近、学生コミュニティをつなぐ団体の方から連絡をいただきました。たくさんの方と繋げてくださって、予定がどんどん埋まっていきます。大変ですがとても嬉しいことですし、何よりこんな小さな団体に気づいてくれたことがありがたいです。

普通の高校生になりたくない

私が課外活動に取り組み始めたのは、学校の課題で出された探求論文がきっかけです。テーマに悩んで手に取った本に書かれていたのが、「日本にも貧困問題が無いわけはない」という意見。自分が気づいていない社会問題がたくさんあることを知り、その解決を人任せにしていたら一生終わらないと思ったんです。

高校に入って授業が増え、同じことを繰り返すだけの生活が面白くないと思ったことも、課外活動にのめりこんだ理由です。今思うと、小中学生の頃に学校=強制だと思わず、もっとそれ以外の社会に目を向けて生活していれば良かったなと思っています。今でこそ普通に学校に行けていますが、小中学生の頃は正直無理して学校に行っていました。毎晩のように家のリビングで泣き、それでも翌朝には嫌な場所に行かなくてはならない。そのような過去があったからこそ、学校という小さい範囲ではなく、広いところを見ていられたら、今、もう少し幅が広がっていたのかな、と。

私の周りには不登校だった子が多いのですが、そういう子たちは別に家に閉じこもって何もできないわけではないんです。元不登校でも留学に行った友人が、とても楽しそうにしているのを見てそう思います。学校に行かないという選択は、自分のやりたいことを突き詰められるから、選択肢の一つとしてあるべきなのでは、と考えています。

今は、毎日を同じように過ごし続ける「普通の高校生」にはなりたくないと思っています。だから今、凄く面白いです!

DeruQuiは意見を言え、意見を取りいれられる場

DeruQuiにはゼミ生の秋元さんに誘われ、富山版起想ゼミにまず参加しました。誘われた時から「これは自分にメリットしかない!」と思っていましたが、実際に参加したらやっぱりメリットしかなかったです。普通は意見が違うのは怖いことかもしれませんが、DeruQuiではそれが受け入れられる。そこが楽しい部分ですね。

選抜コースでは、今の自分よりも一段も二段もステップアップしたいです。そのために自分の意見を言語化して伝え、そこでもらった意見を自分に取り入れパワーアップしていきたいと思っています。1年先には大学進学も控えています。大学に行けばさらに多くの人と関われると思います。そこでDeruQuiや学校などで得た知識を活用し、もっと大きなフィールドで活躍したいと思っています。

違いはあれど「みんな人」

私は、学校のクラスメイトにたくさんの人種がいるおかげで、良くも悪くも特に「違い」を意識せずに、自分と異なる人として接することができます。どんな人も皆、「ただの人」。これはSDGsの問題とも関わることだと思います。人種など属性から人をカテゴリ分けして区別するのではなく、あなたと私はこう違うけど、一緒に話そうね、という態度を大事にしたいです。ある大学の准教授から「SDGsを解決する以前に、人権問題が解決できていない」とのお話を聞いたとき、人権に差があることを知り、まだまだ知らない問題があることにここでも気づきました。

普通は、人と違う、ということは怖いことです。私も、アジア系ではないクラスメイトに威圧感を感じて怖かった時期もありました。でも、向こうの人って、とても社交的で話しかけてくるんですよ。その中で、自分とは違う考え方をすることに面白さを感じるようになっていました。冒頭で挙げた、プロセスではなく結果を重視する考え方もそうですね。

だから私は、年齢・性別に関わらず全世代の意見を受け止められる人になりたいです。私はよく、視野が広くて経験豊富な大人から「言われたことをやるのは大事」と言われて、自分の意見を聴いてもらえません。「いずれ大人になればあなたも同じようになる」と言われますが、人の意見を否定する大人にはなりたくありません。意識すれば、そういう大人にならずにいられると思っているので、どんな意見も受け止められるようにしていたいです。

同じ高校生でも、世界を見ると、とんでもない数の価値観があります。これからもいろんな価値観を知りたいですし、自分に取り入れてもっとパワーアップできればと思っています。私はまだ、「こんな大人になりたい」という明確な像がありません。活動を通して「なりたい自分」を探しています。

編集後記

「どんな人も受け止める」。この言葉通り、明るくい笑顔でご自身を素直に語って心を開いてくれた飯さん。アグレッシブさも兼ね備えており、高校生だからこそできる活動を全力で取り組みつつ、「年齢は関係ない」を自らの使命感と行動力で証明してくれました。忙しいに違いないのに、そんな環境を心から楽しみ喜んでいる姿を、今後もずっと追い続けたいです。(岩崎咲耶)