株式会社プラネット
DeruQuiの協賛企業である株式会社プラネットに企業インタビューを実施した。語り手は同社会長の玉生氏。起想ゼミのメンターとして参加いただいた執行役員の今村氏にも同席をいただいた。DeruQui起想ゼミに参加する学生4名が聞き手となり、創業からの歴史、社会貢献に対する熱い思いをお伺いした。(2020/12/04)
株式会社プラネット 会社概要
日用品・化粧品業界を中心に、一般消費財の流通ネットワークを支える“インフォメーション・オーガナイザー”。1985年設立。
今回、インタビューを受けていただいた方をご紹介
玉生 弘昌氏(株式会社プラネット 代表取締役会長)
今村 佳嗣氏(株式会社プラネット 執行役員 イノベーション推進部 部長)
参加ゼミ生の紹介
瀬戸 雅也:香川大学経済学部4回生
舟橋 咲希:金沢大学法学類 4年
山田 雅:富山大学 経済学部 経営学科・財務会計 4年
岸上 由佳(記):ポートランド州立大学修士課程2年
社会に貢献する生き方がしたい。多様性を大切に、つなげることで新しい価値を見出したい。だけどどうすればいいのだろう。自分には何ができるのだろう。もやもやした自分を抱えながら、いただいた今回のインタビューの機会。社会に貢献することを第一に考えるプラネット社の歩み、想いに迫ろう、そう意気込んで本社へ向かった。
現地と遠隔参加で実施
株式会社プラネットとは....
株式会社プラネットとは....
企業といえば、利益追求。それがいわば当然の中、業界貢献、社会貢献を一番に大切にする企業である。
プラネット社の社会貢献、ビジョンを玉生氏のお言葉を借りて紹介しよう。
例えば街に三店のレストランがあるとする。このライバルが競い合うべきはどこだろうか?自ら水道管をひいて、いい湧き水を通すこと?自ら電気やガスをひくこと?そうではなく、競うべきはその料理であろう。そのために、水道、電気、ガスはインフラとして、それぞれ別の専門が担当し、同じものを同じだけ供給すればレストランはそこに余分なコストや労力を割くことなく、料理の質を高め、メニューの幅を増やすことができるのだ。それはさらに言えば、街に住む人の食文化を豊かにし、守ることにも繋がる。
この考えを消費財業界のために応用し、業界のための「インフラ」となるべく作られたのが、プラネット社である。消費財メーカーの競争を下支えしている。
もう少し具体的に言うと、消費財メーカーが一番に集中すべき/したいことは、競合企業に勝てる、社会に求められている製品を世に提供することであろう。一方で例えば、商品の受発注を紙に書き、卸とやりとりすることは、物を売る業界には必要な作業だが、非効率的なところでもある。ここを「インフラ」ととらえて、デジタル化(EDI(電子データ交換システム))して運営しているのが、プラネット社だ。
そのおかけでメーカーはより、製品価値向上や製品の多様化に力を注げるようになった。
さらにシステムを中立的な立場のプラネット社が運営し、徹底的に標準化することによってメーカーの情報が安全に、平等に交換されるシステムを確立している。
プラネット社はこのように、商品の多様性と消費文化を守り、発展させることに貢献している。業界特化型の情報インフラとして、「広く遍く」業界、ひいては日本社会に貢献することを目指す会社である。
ご説明いただいた資料より
プラネット社の創業のきっかけ
「業界に必要なものを考え、タイミングを逃さない」
プラネット社創業のきっかけを尋ねると、思いがけなくその答えはシンプルだった。”必要なものがタイミング良く揃い「しめた」と思った。”
当時ライオンで勤務されていた玉生氏。1984年にライオンとユニ・チャームが卸店との電子データ交換のための端末機の共同利用を開始したのをきっかけに、複数対複数のパケット通信技術を用いた業界共通プラットフォームを考案するに至ったという。
パケット通信と言っても、当時は一般に知られていない技術。国内で当時先進的にパケット通信を可能にしたインテック社と玉生氏のつながり、通信事業の自由化が追い風となった。一企業社員を越えて業界全体を考える玉生氏の熱意がもたらした画期的なシステムである。
複数の卸店と複数のメーカーをつなぐインフラを整備しただけでなく、VAN(Value Added Network)として受発注データ+販売データを交換できるシステムを構築した。
しかし、ここに至るまでに、玉生氏はどのように、競合他社のメーカーの心を動かし、同じ方向を向かせたのだろうか。
人を動かす、とは 。
同じ業界とはいえ、メーカー企業はそれぞれが互いに競い合うライバル同士である。それぞれが差別化を図りながら、市場で勝っていける製品を作っている。個々の企業の受発注データや売上データは、マーケティングを行う上で、決して他社に漏洩してはならないものであろう。そんなメーカー企業を説得するにあたり、玉生氏が心がけていることとは何だろうか。
「唯物的価値と形而上的価値の共有」
プラネット社にどのような成長戦略があって、どのように便利でどのくらい協賛したメーカーに利益を生み出すのか。業界全体に貢献できるものなのか。
ーこれらを目に見える、言葉にできる価値、つまり唯物的価値、と玉生氏は呼ぶ。ビジネスとして人を動かす上で最も大事な価値の共有ではないだろうか。
しかし、玉生氏は「言葉にできる価値」だけの共有では、人の心は容易に動かせない、という。では、人の心を動かす価値とは何だろうか。
―「形而上価値」の共有である。形而上価値とは、つまり「言葉にできない」価値だと言う。例えば、「美しい」や「正しい」という表現は理屈ではなく、人間の心の中に感じて在るもの。「人の役に立ちたい」も社会性を持った人間の本性なのだと。そして「人の役に立っている」という自覚、それを予感させることこそが、人をやる気にさせて動かすのだ、と。
では、玉生氏の考える形而上学的精神とは、何なのだろうか、そしてどう培われてきたのだろうか。
目に見えない、言葉にできない価値は、理論が書かれた書物から学ぶことはできない。しかし、人間が幸せに生きて行く上では欠かせないものだと玉生氏は言う。その感性感受性を磨く上で、玉生氏は絵を見ることを大事にしている。なぜなら絵を描くということがまさに、人間の心の中の言葉にできない価値を表現することだからだ。その価値を受けとる、わかる、ということはその感性感受性を研ぎ澄ますことにつながる。芸術を人間性の一つとして考えれば、唯物的価値だけでない豊かな人間生活を送ることが幸せにつながるという。そしてビジネスにおける、形而上学的価値が「人の役に立っているという自覚」つまり、社会貢献なのである。
「ニュートラリティ」
プラネット社が人、メーカーを動かすことができたもう一つの大きな点は徹底されたニュートラリティ、つまり「中立的立場」であり、インフラを運営する上で、欠かせないと今村氏は言う。中立でどのメーカーにも平等で片寄せしない。だからこそ、ビジネスにせよ話をしやすく、人が集まりやすい。メーカー同士の情報交換の場を設けることもプラネット社は行っている。ニュートラリティが、業界発展を下支えし、消費者の豊かな購買活動、その文化を守ることにもつながっているのだろう。
本社には、あらゆるところに美術品がずらり。
これからのプラネット社
玉生氏いわく、「お客様の幸せ同様に社員の幸せも大事」。社員には常にご機嫌で働いていてほしいと言う。ご機嫌で働くためには、社員が自由であること、失敗を恐れることのない環境があること、そして学び続けることがカギであるという。
そんな、社会全体を幸せに導く「社会貢献のビジョン」を受け継ぐことがこれからやっていかないといけないこと、と今村氏。物が動く限り、情報インフラを運営するプラネット社がなくなることはない。10年先、それよりもっと先にもプラネット社はある、と玉生氏は断言する。ただ、10年、20年、30年と社会の求めるもの、解決すべき問題は変わっていく。技術も進化していく。その中でも、その時その時に社会で求められているものに貢献できるように考えて動いていこう、そう今村氏は言う。
これから社会に出る若者へ
玉生氏に最後に聞いてみた。我々のようなこれから社会に出る学生がやっておくべきことは何だろうか。
勉強すること
幅広く本を読むこと
出会いを大切に、外の世界の友達を作ること
1は言うまでもないだろう。2は自らも本を書き、さらに書評を書く玉生氏からの言葉ということもあり、説得力がある。私なりの解釈は、ただたくさん本を読むだけでなく、自ら解釈すること、そして分野を問わず、幅広く読むことで知識を拡げ、深めること、だ。3は少々社交的でない私にとって耳の痛いアドバイスだ。「外の世界」とは、自分の知らない、専門でない世界の友達をつくっておくこと。「これをしたいけど、これにはあれが必要。でも自分にはできない。だけど、あいつならできる!」そういう友達を作っておくこと。いざというときに繋がって互いに、協力し合える、損得勘定のない仲間を大切にしなければならない。
あとがき
インタビュー前、目先の利益よりも社会への貢献度を優先する会社、さらには上場済みと、起業したての私からすると聞きたいことだらけでした。
会長の話を聞いている中で、創業時の思いや、組織文化の話があり、貢献を優先するということに納得です。サービス提供者として、「世の中のために」という気持ちは忘れずにいようと決めました。(瀬戸雅也)
「言葉にできる価値」だけの共有では、人の心は容易に動かせない。私にとって特に印象的な玉生氏の言葉だ。私たちが言語を司る人間である以前に、感性を宿した生物であることを改めて実感した。(山田雅)